M/S処理 その2
・活用シーン
原理的に、この処理はオーディオ化(ミックスダウン、またはバウンス)と位相反転を使うと手動でも行えます。
まず、元のステレオトラックをモノラルミックスダウンでオーディオ化(L+R=M)します。
次に、元のステレオトラックをチャンネル分割保存で分けて、オーディオ化(ステレオL、ステレオR)します。
チャンネル分割した2つを並べ、ステレオRを位相反転し、その状態でモノラルミックスダウン(ステレオL-ステレオR=S(L))します。
さらに、そのトラックを位相反転したもの(S(L)→S(R))を別途保存します。
最後に、最初のモノラル化したM、差分であるS(L)とS(R)を並べて、S(L)とS(R)をパンで各側に100%振り切ります。
これでMとS=S(L)+S(R)に分けるM/S処理が終わり、ここから音圧調整やエフェクト追加などを行えます。
採用が一番多いのは、自然なステレオ感のいらないシンセサイザーの音量を上げるパターンです。
存在感を拡げたいギターやボーカルにうっすら使われることもあります。
リバーブやダブリングとはまた異なった広がり方をするので、前に出したい音に対してSを上げるのは有効と言えます。
あらかじめステレオの位置関係が調整されているオーケストラなどには向きません。
アコースティックな楽器でも、強くかけると自然な鳴りが崩れるのであまりオススメできません。
逆に、Sを落とすと相対的にMに寄るので、微調整を加えられるモノラル化として扱うこともできます。
Sにフィルターやディレイといったエフェクトを差し挟むのも面白い手です。
その場合はS(L)とS(R)に同じ設定でかけましょう。
一部のジャンルで、曲全体の音圧を上げるための代表的方法として解説されていることが多いです。
楽曲制作を普通のステレオ環境で行うと必然的にM成分が多くなるので、表現としては間違っていません。
しかし、その性質上決して万能ではなく、音楽性が自動的に増すわけでもないことに注意が必要です。
音をガツンと前に出したいロック、エレクトロニカで使う機会があると思います。
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